a tale of memories 2.ある修道女の物語。

2.ある修道女の物語
 
 
今日も精霊たちの歌がきこえる。
 
お花たちのおしゃべりが大好きなの。
でも、会話をしている事を、大人たちは皆笑う。
きっと、幻想を見ていると思っているのだわ。
 
本当に、
精霊たちはいつもそこにいる。
優しく語りかけて遊んでくれる。
私、大人になったらお花で人を幸せにしてみたいのだけれども、、、
 
あまりに精霊とのお話のことを言いすぎると、白いお部屋に入れられて、、、。
そこから出られなくなる。
 
私はもう何も言わないことにしたの。
だまってみんなと、、、心でおしゃべりするの。
 
とおさまや、かあさまは、私を修道院にと言うの。
分かってる、それが、この家に生まれた定めだって。
だから、覚悟してる。
 
 
*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*
 
 
少女は、修道院生活の中で、様々な植物を用いて人を治癒する方法を知ります。
そして、不思議と誰にも聞かずともその発想が湧き出てくるのです。
黙っていました。
湧き出る泉のような発想力は、悪魔の力と思われるからです。
慎重に、書物から学んだふりをして時を待ちました。
 
戦争と疫病は、彼女の湧き出る泉により様々な人を救います。
また、ときおりみる幻視体験は、様々な人の心の芯を突き、導いていきます。
やがて彼女を頼る人が増えていき、修道院長および上に位する人々は、彼女のことを悪魔の使いであるとか魔女として貶めることは、損失であるとして神の奇跡に噂話をすり替えていきます。
 
時を経て、彼女の元には仲間が増えていきます。
彼女は皆に薬草の知恵全てを教えていき、やがて医療チームのような組織として、活動領域を広げていきました。
 
飢えと貧困、この世の平等はどこへ行ったのかと思うような経験を繰り返す中での希望は、人々の感謝の心と真心。
彼女は確信を持ちます。
 
精霊たちの会話のようになされる人々の優しい言葉の響き、そして植物たちの響きは、心を安らかにして、今という現実を生きる力を生み出すのだと。
治療することだけが、生きるということではないということを。
病や怪我が治ったとしても、それが人生の喜びや幸福感をもたらすとは限らないことを。
 
永遠に受け継がれるこの真理を、植物を通して伝えることを、彼女は決意します。
 
生きて死になさい。
 
彼女は、その生涯を通して、決して揺るがぬこの真実の言葉を伝え続けたのでした。
 
 
ヒルデガルドの映画の画像をお借りしました。
この少女はヒルデガルドではないのですが、似たような経験として、何度も脳裏に再生される物語です。
 

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a tale of memories 1.ある戦士の物語。

1.ある戦士の物語。

部隊を束ね先頭を切るその人は、

いつも、

勝たなければならないと思っていました。

そして、

敵を倒すことで恒久的な平和を民にもたらすと信じ切っていました。

違う言葉と文化を形成するとはいえ、敵も同じ人間です。

ですが、

信じ切っているその人に、その事は見えていませんでした。

我々こそが、高い知識と洗練された文化を持つ、優秀な種であり、

それ以外の人々に「正しい統治と教育」が必要であると思い込んでいました。

侵略と支配を繰り返すうちに、ようやく「人の心」が見えてきます。

やがて、

その人は「異なる人々」に愛着を抱くようになります。

家族のように思い共に生きることに疑問を抱かなくなります。

そこには「生きる営み」があり、人種と文化を超えた交友があることを知ったのです。

しかし、

ほんの些細なことをきっかけに、その関係に亀裂が生じます。

王は殲滅を望みましたが、その人は迷いました。

共に生きた期間の記憶がその人の判断力を鈍らせます。

さらに、

絶対なる信頼と崇敬の念を寄せていた王は、不要なその人を簡単に見捨てます。

その迷いと絶望はその人の部隊を全滅させてしまいました。

死ぬその間際に、その人は自分の手を見つめ、その手にしてきたものの意味を己に問います。

*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*

この戦いは何のためにあったのだ。

誰一人として幸せになることはなく、

通じ合った心も、結局は支配という形でのことでしかなく、

異なる人々の心はどこか我々を憎んでいたのだ。

その時の情勢により、コロコロと変わる王の気持ちに振り回されて、

人の心を忘れて、ついには大切な人を、、、愛する家族を、仲間を、部下を失った。

私は単なる人殺しなのだ。

戦うことに何の意味もない。

*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*

その人は、

戦うことの虚しさを、部隊の全滅と自らの死をもって知ったのです。

*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*

私がもし生まれ変わるというならば、

私の家族と部隊の人間には幸せになってもらわねばならない。

いや、私に関わった全ての人々に幸せになってもらわねばならない。

その為にただ私は生きよう。

我々は戦うことしか知らない。

共に戦ってくれた私の部下には、本当の意味での幸せを感じて欲しい。

もっと多くの人の心に触れて、人間らしい生き方を手に入れて欲しい。

私は立ち向かう

己の罪から逃げることはしない

もう一度、私と共に生きてくれるというならば、その時には、

人を救い生かす存在として

共に

*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*

彼女は息を引き取るその瞬間、子供の頃に語った夢を思い出します。

「私、大きくなったら、お花で人を幸せにするの」

 


映画スノーホワイトのポスターがイメージにぴったりでしたのでお借りしました。
http://www.impawards.com/2012/snow_white_and_the_huntsman_ver8.html

 

 

繰り返しふと浮かぶ物語があり、それを書いていこうと思います。

 

記憶のかけらのような、断片的なものもありますが、なんだか書き残したくなりました。

 

その気持ちに従ってみようと思います。

 

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